Lektion10 名詞の複数

今回は名詞の複数形についてです。

1.複数形の5パターン

英語の場合、単に語尾に-s を付ければよかった複数形ですが、ドイツ語の場合慣れるまでは手こずるかもしれません。
語尾のパターンが5つあるからです。
1つずつ確認していきましょう。

その1 ゼロ型
これは単数系と比べて全く形の変わらないタイプです。
母音がウムラウトすることがあります。
「ウムラウトする」とは、a, o, u がそれぞれ、ä, ö, ü の母音に変化してしまうことです。
Wagen やBruder (兄弟)などがこれに当たります。

・単数 Wagen 複数 Wagen
・単数 Bruder 複数 Brüder

その2 E 型
語尾に-e が付くタイプです。
母音はウムラウトすることがあります。
Tisch やZug (列車)などがそうです。

・単数 Tisch 複数 Tische
・単数 Zug 複数 Züge

その3 ER 型
語尾に-er が付きます。
これは男性名詞か中性名詞の場合のみで、女性名詞は複数形でER が付くものはありません。
このタイプの名詞が複数になると、必ずウムラウトが起こります。
Mann などが例に挙げられます。

・単数 Mann 複数 Männer

その4 EN 型
語尾に-en が付きます。
-e で終わる名詞の場合は-n のみが付きます。
このタイプはウムラウトすることはありません。
Kirche やUhr (時計)などがその例です。

・単数 Kirche 複数 Kirchen
・単数 Uhr 複数 Uhren

その5 S 型
英語と同様、語尾に-s が付く型です。
これはすべて外来語に限られます。
このタイプもウムラウトは起きません。
例を挙げれば、Autoなどです。

・単数 Auto 複数 Autos

複数形の形は名詞によって違うので、単語を覚えるときは性と複数形に注意して覚えなければなりません。
とはいえ、慣れれば単数系の形だけでだいたい複数形の想像がつくようになります。

2.冠詞の変化

名詞の性について学習したときの定冠詞の表ですが、複数形になるとまた違った変化をすることになります。
表で確認してみましょう。

男性 女性 中性 複数
1格 der Mann die Frau das Kind die Kinder
2格 des Mannes der Frau des Kindes der Kinder
3格 dem Mann der Frau dem Kind den Kindern
4格 den Mann die Frau das Kind die Kinder

Kind は-er 型なので、Kinder となっています。
複数形は、男性名詞が複数になろうと中性名詞が複数になろうと、すべて同じ変化をします。
また、ドイツ語では複数形に不定冠詞がつくことはありません。(定冠詞類・所有代名詞は付けることができます)
eine Kinder なんて言い方はしないんですね。
複数形の3格は名詞に-n という語尾がつくのに注意してください。
ただし、複数形が-n で終わっていたり、S 型の複数形には3格の-n はつけません。
では、例文を見てみましょうか。

・Alle Menschen werden Brüder.(すべての人々は兄弟となる。)

ベートーベンの第九からの例文です。
Mensch は男性名詞で「人間」です。
今度は3格を使った例文を。

・Ich helfe meinen Brüdern.(私は兄弟たちを助ける。)

helfen は「~に手を貸す」という意味で、3格目的語をとります。

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noch einen Schritt weiter ~もう一歩先へ~

ドイツ人がドイツ語の名詞を人に教えるときに、<e.Kirche/n>といった書き方をすることがあります。
最初の「e.」 はKirche (教会)が女性名詞だということを表しています。
女性名詞1格の定冠詞die の最後の文字をとったんですね。
男性名詞ならr. 中性名詞ならs. と書きます。
最後の「/n」 はKirche の複数形はn 型のKirchen だということを表します。
以上、少し小慣れた名詞の書き方でした。

さてさて、男性名詞の中には、単数1格以外すべての数・格で-(e)n の語尾がつく名詞があります。
これが男性弱変化名詞です。
男性弱変化名詞のStudent (大学生)を例に、表を見てみましょうか。

単数 複数
1格 der Student die Studenten
2格 des Studenten der Studenten
3格 dem Studenten den Studenten
4格 den Studenten die Studenten

たとえば、このような文です。

・Ich helfe dem Studenten.(私はその大学生(単数)を助ける。)

すべての男性名詞がこのように変化するというわけではなくて、
数少ない男性弱変化名詞と分類されている名詞だけがこのように変化するわけです。
これは辞書で調べればわかります。
このとき、-n が付くか、-en が付くかの違いですが、
e, er, bar に終わる名詞は-n が付く。
それ以外は-en が付く
という分類があります。

最後に、1つだけ特別な変化をする男性名詞、Herr (英語のMr.)についてです。
これは男性弱変化名詞に近い変化の仕方をしますが、微妙に違っています。

単数 複数
1格 Herr Herren
2格 Herrn Herren
3格 Herrn Herren
4格 Herrn Herren

このような変化をするのはHerr 1つだけなので、覚えてしまいましょう。

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