Lektion7 名詞の性・格と冠詞

今回は名詞についての話です。

1.名詞には性格がある

ドイツ語の名詞には性と格が存在します。
どちらも英語以外の西洋諸語を勉強している人にはお馴染みでしょうか?
「性」というのは動詞の性質です。
ドイツ語では男性・女性・中性と、3つの性があります。
誤解される人が多いのですが、この名詞の性には話す人の性別だとか、そういう人間の性別とは一切関係がありません。
別に男性名詞・女性名詞・中性名詞でなくともA 名詞・B 名詞・C 名詞という区分でもなんら問題はないのです。
そして、ドイツ語の名詞はすべてこの3つの性のいずれかに分類されています。
たとえば、机はドイツ語でTisch といいますが、これは男性。
ドアならTür で女性。窓ならFenster で中性です。
ドイツ語の名詞はすべて大文字で始まるんでしたよね。

名詞の性については1つ1つ覚えていく他ありません。
例えば新しく「水」という単語を覚えるときに、
辞書で「なるほど、水はWasser というのか。性別は中性。ふむふむ。」と、ドイツ語の名詞を覚えるときには意味・綴り・性を覚えなければなりません。
(もう1つ、複数形の形も覚えなければならないのですが、これは後ほど。)

次に格についてです。
これも英語しか知らないとわかりづらいかもしれませんが、
中学や高校でI, my, me, mine なんて呪文を唱えた人も多いのではないでしょうか。
これが格なんです。
つまり、「私は行きます」。という文なら「I go.」と、「私」は「I」で表現されるのに対し、
「彼が私を見ます」だと「He looks me.」と、「私」が「me」で表現されますよね。
英語ではこのように人称代名詞の時のみ格が問題となりましたが、
ドイツ語では普通名詞の時にも注意が必要です。
といっても、名詞そのものが変化するわけではありません。
問題は冠詞にあるのです。

2.名詞の冠

「冠詞」って、みなさんわかりますか?
英語でいう、a とかthe とかに当たるものです。
それでは、名詞の性・格によって冠詞がどう変化するのか、
男性名詞Mann (男の人)、女性名詞Frau (女の人)、中性名詞Kind (子供)を例に見てみましょう。
まずは定冠詞の表です。

(意味) 男性 女性 中性
1格 ~は(主語・述補語) der Mann die Frau das Kind
2格 ~の des Mannes der Frau des Kindes
3格 ~に dem Mann der Frau dem Kind
4格 ~を den Mann die Frau das Kind

例によって赤字にしたところが、今回覚えてほしい部分です。
定冠詞というのは英語でいうthe です。
話者と聞き手の間に、概念としてすでに存在する名詞に用いる冠詞ですね。
男性名詞・中性名詞は2格のときに-(e)s が付くのに注意してください。

では例文を見てみましょう。

・Das ist das Auto des Vaters.(これは私の父の車です。)

Das は「これ」、Auto は中性名詞で「車」、Vater は男性名詞で「父」です。
das Auto は述補語なので中性名詞の1格のときの定冠詞das を、
des Vaters は「~の」と訳せるので男性名詞の2格のときのdes -s を用いていますね。
英語と違い、2格は名詞の後ろから名詞を修飾しているので気を付けてください。
述補語とは、SVC の文型のC に当たるものでしたね。
①は②である、とか①は②になる、とか①と②がイコールの関係で成り立つときの②に当たるのが述補語です。

例文をもう1つ。

・Sie liebt den Vater.(彼女は父親を愛している。)

lieben は「~を愛する」という意味の他動詞。
なぜここでden が使われているのか、もう解説はいりませんね。
表の中に意味として書いた「~に」とか「~を」とかは、その意味の通りにならないことがあるので注意してください。

次に不定冠詞の表です。

男性 女性 中性
1格 ein Mann eine Frau ein Kind
2格 eines Mannes einer Frau eines Kindes
3格 einem Mann einer Frau einem Kind
4格 einen Mann eine Frau ein Kind

不定冠詞の表も定冠詞と似ていて覚えやすいですね。
不定冠詞とは、英語で言うa で、「1つの」なんて訳され方をするか、訳されないことが多いです。
また、ein を使った文を否定するには、kein を用います。
このkein は不定冠詞と同様の変化をします。
たとえば、

・Hier steht eine Kirche.(ここに教会が1つ立っています。)

という文です。hier は「ここ」、stehen は「立っている」、Kirche は女性名詞で「教会」です。
これを否定するには

・Hier steht keine Kirche.(ここには教会は1つも立っていません。)

と、不定冠詞の文を否定するにはnicht は用いず、kein で否定します。

今回やった定冠詞・不定冠詞の表はドイツ語学習の最初の山場です。
この表を見て、嫌になってドイツ語が嫌いになったりする人もいますが、
語学を楽しむコツはあくまで「適当」にやることです。
完璧に覚えなくても、冠詞の語尾を間違えてもドイツ人はちゃんとわかってくれます。
さらにその間違いを正してくれて、そうやって間違いながら覚えた表現のほうが記憶に残ります。
忘れたら、また覚えればいいんです。
みなさんどうぞ、「適当に」ドイツ語を勉強してくださいね。

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さてさて、男性・中性の2格のときには-(e)s が付くという話について詳しく。
-s がつくか、-es が付くかは以下のように判断します。
長い単語・e, el, er, em, en で終わる単語は-s
短い単語・s, ß, z で終わる単語は-es
判断に迷った時は、辞書を確認すれば載っています。

次に、3人称の人称代名詞について。
er, sie, es と3種類あったのは英語のhe, she, it に相当と説明しましたが、厳密にいうと、すこしずれています。
たとえば机のことを「それ」と言いたい場合、英語の感覚ならit を使うでしょうが、
ドイツ語ではer を使います。
なぜなら、「机(Tisch )」が男性名詞だからなんですね。
例文を挙げるなら

・Das ist der Tisch der Mutter.(それは母の机です。)
・Er ist teuer.(それ〔その机〕は高価です。)

と言う具合です。
このように指示したいものが男性名詞ならer 、女性名詞ならsie 、中性名詞ならes を使うわけです。

最後に定冠詞類の話。
定冠詞と同様の格変化をするものとして、定冠詞類があります。
これにはdieser(この、このような), jener(あの、あのような), aller(すべての),
Jeder(各々の), solcher(そのような), mancher(かなりの)
といったものがあります。
これらはすべて定冠詞の代わりに名詞につけ、定冠詞と同様の変化をします。
参考に、dieser の変化表を載せておきます。

男性 女性 中性
1格 dieser Mann diese Frau dises Kind
2格 dieses Mannes dieser Frau dieses Kindes
3格 diesem Mann dieser Frau diesem Kind
4格 diesen Mann diese Frau dieses Kind

定冠詞と同様の変化をしていますね。

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